中小企業論(鵜飼教授)講義メモ

中小企業論での講義の中から、印象的だったお話をいくつかピックアップしました。中小企業論とはあまりの関係のないように思われる身体論、運動論、文化論なども講義の中では頻出し、それも魅力ではあります。

 

【日産問題について(11/20)】

●カルロス・ゴーン氏には早稲田大学2005年名誉博士号

  2015年本学講演での言葉は「完璧な人間などいない」

●大企業は中小企業(株主=経営者)の真似をしてはいけない。

 大企業では独裁者になってはいけない、

 仕組みを悪用する人が出てくると問題が起こるもの。

●日産とトヨタの違い

・トヨタはシボレーを分解してまねて作った 

 中心は豊田喜一郎(東大工出身)、豊田佐吉の子息で親子とも現場の人

 戦後も自前で設備を作り、自動車を作る

 トヨタの人間は創業者のエピソードを場所とともに語る

 (「彼はここでこう言った」)

 日産でそういうことは聞かない。

 両社は「工場に関する思想」が異なっている。 

・日産はグラハムページの設備を持ってきて

 ウィリアム・ゴーハムに作らせる(外国頼み)

 戦後、英オースチンの委託生産を行い、

 アメリカ人エンジニアのストーン氏技術指導を請う。

 オースチンのエンジンを分解してストーンエンジンを考案し、ダットサンに搭

 載。

 中心は鮎川義介(同じく東大工出身)

 日産コンツェルンを作り満州に本社を置く。

 最初からグローバル企業ではあった。

 

【身に付けたもので生きる事例】

●東日本大震災で工場が全壊した石村工業(岩手県釜石市)の例

・1980年代までは新日鉄釜石の下請をしていたが工場の操業停止を受け

 自社製品開発にシフトし、イクラ計量器、ペレットストーブ、

 ワカメ加工機などを販売。

・工場全壊して、設備も消失。

 それでも、ワカメ加工機が必要な人たちからの懇願を受け、

 5月末、融資も受け操業再開。

 図面が流されても頭の中に図面があり、設備がなくなっても腕に技術があり、

 身に付けたものでやり直すことができた。

・「震災後の今が一番充実している」「怖いものがなくなった」

 という社長の言葉

・地域の復興と会社の発展がリンクしている。

 地域の中で生きるものづくり企業の事例でもある。

・「昨日見し人はと問えば今日はなし 明日また我も人に問われん」

 

【熟練とはどのように生まれるのか】

●価値を生み出すものを身に付けるのは時間がかかる。

 それゆえ、経済動機のみで行動するだけではない。

 自己の興味、使命感、プライド、惰性など…。

●子ども向けもの作り教室を見ていて気付いたこと

 =使い方(持ち方)はめちゃくちゃだが、表情、目は真剣。

  それは職人であっても子どもであっても同じ。

●「人間は道具を持つと集中する」これが熟練の出発点。

 脳には、道具を体の一部と認識する機能がある。

●使い方を身につけるとは、作業の基本姿勢を「身体で」覚えること

 

【大学で学ぶということ】

●大学では潜在的な心の姿勢がおぼろげに形成されるだけ。

 何かを身に付けるには社会に出なければならない。

 社会に出ることで、自己を他人にさらし、プライドを傷つけられ、

 自己を再構築する。

 自分の価値を評価するのは他人。

 他人の目に晒されなければ、自分の価値は高まらない。

●大学で何かを身に付けたわけではないが、何かが心の中に入り込んでいる