格安ケータイはなぜ普及しない?~スイッチング・コストから考える

先月、携帯電話の契約をSから格安ケータイのYに切り替えました(つまり系列としては一緒)。さらに自宅インターネットを新規契約(前宅ではポケットWi-Fiを使っていたのですが新しい家ではいまいち電波が悪いので)、固定電話も切り替え。3つで料金は半額以下になりました。ポケットWi-Fiの費用を加えても、今までよりも全然安くなりました。

 

さて、使用上何か問題があるかと思っていたのですが…ない。何もない。不安になるほど、何もない。唯一以前と違うのは、以前使っていたキャリアのメールアドレスが使えなくなってしまったことですが、基本的にメールはショートメールかPCのEメールを使っており、実質DMしか来ていなかったので、本当に、何も変わらない(万が一、携帯アドレスでやり取りしている知り合いの方がいたら、ごめんなさい。特に思い当たらないけれど…)

 

ということで、月々の費用負担が減って本当によかったのですが、こんなに変わらないと、そもそも元々の値段て何やねん、という感もあります。

 

携帯電話の乗り換えコストは小さくない

 

私的には大満足の格安ケータイですが、今一つ普及していない、という見方が趨勢のようです。その原因については色々な分析があるようですが、私の実感も踏まえて考えると、携帯のキャリアを変えることの「スイッチング・コスト」が大きいことが原因ではないかと思います。

 

スイッチング・コストとは文字通り、乗り換えにあたって掛かる費用のことで、携帯に限らず、商品の買い替え、ブランドチェンジにおいて考慮されるものです。

 

例えば、

https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11837.html

によると、

「現在使用しているソフトウェアを買い替える場合、

・金銭的コスト=買い替えの費用

・手間コスト =操作の違いに慣れるために費やさなければならない時間と労力

・心理的コスト=新しいソフトの使い方を1から学び直さないといけないというプレッシャー

といったスイッチング・コストが生じます。」

 

格安ケータイへの乗り換えの場合で考えてみると、

・金銭的コスト=買い替えの費用

  +もとのキャリア契約の解約料(2年縛りのような契約が多い)

・手間コストや心理的コスト

 =操作の違いに慣れるために必要になる(かもしれない)時間と労力

  +どの格安ケータイを選ぶのか?を検索する時間と労力

  +実際に契約のために店頭に行ったりネットで申し込みをする時間や労力

 

私の場合は、「どの格安ケータイを選ぶのか?を検索する時間と労力」「実際に契約のために店頭に行ったりネットで申し込みをする時間や労力」両方とも非常に負担に感じました。格安ケータイや格安SIMを提供している事業者はたくさんあり、違いを比較検討するのは結構面倒です(結局、Sと同系列のYなら楽かな?と思って決めました)。あと、店頭での契約に時間が掛かる(待ち時間含めて)というのはこれまで何度も経験済みで、時間がもったいないと思ってしまいます。

 

以上は大手キャリア間での乗り換えでも考えられるコストですが、格安ケータイについては、これにプラスして品質、すなわち時間帯によっては通信がおそくなるのではないか、といった不安も聞かれるので、さらに、乗り換えに慎重になってしまうのではないかと思います。

 

新しい商品やサービスを提供しようとするにあたり既存の商品やサービスがある場合には、どんなスイッチング・コストが存在して、どうすればそのコストを下げることができるか、と考えることが有用ですし、逆に自身の商品やサービスについては、いかにスイッチング・コストを高めるかが、顧客に長く使用してもらう(顧客を囲い込む)ためのポイントになります。

 

またスイッチング・コストは、商品やサービスの本質的な機能だけでなく、付加的な機能や特性によっても生じうることにも注意が必要です。携帯電話の場合であれば、本質的な機能は電話、メール、ネット機能などですが、その部分で差がつくことは小さいので、価格体系や特別価格、キャンペーン、ブランドイメージなどが影響します。

 

携帯会社のCMは何のため?

 

「購入したいけれど踏み切れない」場合、結局判断するに足りるだけの情報がないから決心できないケースが多いように思います。今回の場合、「どの格安ケータイを選ぶのか?を検索する」のが面倒で、必要な情報が集まらないのです。

 

また、そもそも格安ケータイ会社が意思決定に必要な情報発信を適切に行っているのかというと、これも甚だ疑問です。今回切り替えたYも、割とCMを目にするのでそれなりの広告投資をしているはずですが、YのCMと言えば、何だかたくさんの人が踊っているイメージしか浮かびません。本当は伝えるべきことはあるとわかっているけれど、どうせ15秒や30秒では伝わらないから、他の媒体で伝えると割り切っていたうえで、イメージCMに走っているのだと思いますが、どこの会社もそんな感じ(インパクト重視、キャラ重視)なので、携帯会社のCMって全体として中身がない印象が私にはあります(浦島太郎とか、犬とか)。CM自体の面白さは否定しませんし、「広告の予算枠」が決まっている大手企業はこれでもいいですが、一般の企業の広告のスタンスはこれではダメです。全然、ダメです。

 

ということで、最後はケータイ会社の悪口みたいになってしまいましたが…乗り換えたこと自体にはほんと、私は満足しています。あえていえば、メールアドレスの設定とか、その他初期設定については、同じキャリアでの買い替えに比べてかなりに手間でした(もらった説明書みて時間かけてやりました)。私が乗り換えた後に妻も同じように乗り換えましたが、彼女は店頭で聞いたけどよくわからず、端から私に丸投げでした。この手の設定が得意じゃない人は、あんまり向いていないのかもしれないので、ご注意ください。

(このあたりも一種のスイッチング・コストでしょうか)

 

※写真は、iPhoneを使いだす前の最後のガラケー。

 裏返すとカメラになる。やっぱり赤。